販売画面では、取引は完了と表示されます。けれど物流センターでは、その完了したはずの取引から、二つ目の仕事が始まります。

これは現場の声をお伝えするリアルログです。今日お話しするのは、アパレル物流現場の一角、返品の箱がうずたかく積み上がる場所のことです。
販売画面では、取引は完了と表示されます。ところが物流センターに行ってみると、まさにその"完了した"はずの取引が、箱ごと戻ってきて積み上がっています。アパレルの返品は取引の終わりではなく、二つ目の仕事が始まる合図なのです。
アパレルが物流で特に手強いのには、理由があります。同じ服でも色とサイズで枝分かれし、管理すべき品目数が一気に膨らみます。そのうえ返品率が、ほかのどのカテゴリーよりも高いのです。試着して合わなければ送り返し、色が画面と違えば送り返し、複数のサイズをまとめて注文して一つだけ残す、という具合だからです。
そのため、アパレルの返品はそもそも量が多くなります。箱が積み上がった瞬間から、検品し、状態で仕分け、再び売れるように手直しして再梱包するラインが、別に動きます。売る仕事と同じくらい、戻ってきたものを処理する仕事が、現場の本業なのです。

事業者がまず目にするのは、たいてい返品率です。何パーセントが戻ってきたか、という数字です。ところが本当のコストは、その隣の列に静かに積み上がっていきます。
戻ってきた服を再び商品に戻す作業を、良品化と呼びます。ただ受け取って棚に戻すのではなく、状態を等級で分け、手直しして甦らせる作業です。検品台では一着ずつ広げ、タグがそのまま付いているか、毛羽立ちや伸びはないか、においが移っていないかを確かめます。
同じ返品でも、タグが外れて再販が難しいものもあれば、服自体は問題ないのに梱包が傷んで等級が下がるものもあります。そうして一着ずつ等級が分かれ、手直しと再梱包を経て、ようやく再び棚に並びます。そしてこの良品化は、多くの現場で別途の工賃として請求される項目です。返品率が高いほど、この列は長くなります。販売実績だけを見ていては気づきませんが、返品の多いアパレルほど、精算書の片隅でコストが少しずつ積み上がっていく構造なのです。
アパレルの返品を、お客様の気が変わっただけ、と捉えてしまうと、この列を見落とします。現場では、返品がそのまま二つ目の作業費になることを、毎日のように実感しています。

良品化の等級をつけるときも、お客様と意見が食い違うときも、突き詰めれば一つに行き着きます。この服が、どんな状態で戻ってきたのか、という点です。
問題は、その状態がいちばん早く消えてしまうことです。返品がうずたかく積み上がると、どれがどう入ってきたのかは、すぐに混ざり合ってしまいます。箱を開けて片側に積み、一着ずつ検品しているあいだに、どの服がどの注文からどんな状態で来たのかは、作業者の記憶とメモに少しのあいだ留まり、やがて消えていきます。一日に何百件も同じ台を通っていくと、いざトラブルが起きたとき、その一件の最初の状態をたどり直す方法が、なかなか見当たらないのです。
現場でしばしば耳にする話があります。着ていないと言っていたのに、ポケットからメガネ拭きが出てきたり、新しい服を買って古い服を入れて送り返す例まであるそうです。けれど、その瞬間を残しておかなければ、後になってどちらの言い分が正しいのかを分ける方法がありません。
ここで一つ、触れておきたいことがあります。疑わしい返品を数件防ごうとして検品を厳しく締めると、その煩わしさは、正直に返品した大多数のお客様が一緒に背負うことになります。誰が正直な返品で、誰がそうでないのかが区別できないとき、結局は善良な多数が同じ疑いを受けることになります。入ってきたそのままの状態が残っていれば、疑いの強さは抑えながらも、確かめるべきことは確かめられます。
そしてこれは、事業者だけの得ではありません。入ってきた瞬間の状態が残っていれば、返品を処理する物流センターの現場も等級を分けやすくなり、事業者と責任の所在でぶつかることが減ります。誰の手で傷んだのかが、最初から残っているからです。
そのためでしょうか、近ごろアパレル物流現場の空気が、少しずつ変わってきています。返品が入ってくる瞬間をただ流してしまわず、どんな状態で戻ってきたのかを残しておこうとする現場が増えています。出荷と返品の過程を映像で残す方法を探している、という担当者の声も、現場で以前より頻繁に聞くようになりました。
興味深いのは、これが一つの現場だけのこだわりではない、という点です。外側でも、同じものを求め始めているからです。EC では、事業者が返品を断ろうとすると、再販が難しいほど状態が傷んでいることを事業者が示す必要が出てきます。断る理由として最も多く挙げられるのも、着用の跡のような価値の毀損です。大きな流れははっきりしています。トラブルは推定ではなく証拠で分ける方向へ進み、一部の大手プラットフォームは、返品にともなう補償を受けるには映像の証憑を出すよう求め始めています。内側では良品化とトラブルのために、外側では制度とプラットフォームのために、矢印はすべて、その瞬間の状態へと集まってきているのです。
とはいえ、記録が真実を自動で分けてくれるわけではありません。映像は、誰が正しいかを代わりに判定してくれる機械ではありません。そのかわり記録は、違うように記憶している二人を、同じ画面の前に立たせます。トラブルを、真実の言い争いから事実の確認へと変えるわけです。そして記録が残っているとわかれば、一方が言い張ること自体が減っていきます。
アパレルの返品を、防ぐべき損失としてだけ見ると、できることは検品を締めることくらいです。ところが現場に行ってみると、返品はそうやっては防げません。防ぐのではなく、管理する二つ目の運用として受け入れた瞬間、何を備えるべきかが変わります。入ってきた瞬間の状態を残せるか、そして必要なときにその場面を取り出せるか。リアルパッキングの映像記録のような仕組みは、まさにこの隙間を埋めるためのものです。この問いに答えられるかどうかが、返品の多いアパレルほど、より大きな差を生みます。